NHK土ドラ「フェイクニュース」を見て

NHK土曜ドラマフェイクニュース」前後編を見た。主演は北川景子、脚本は野木亜紀子である。

非常に面白いドラマだった。ネットメディアを題材にして、今の社会の問題を描き出している。私が日頃からネット社会に対して感じている苛立ちやモヤモヤ、問題などを痛快なほどにドラマに盛り込んであり、とても見応えがあった。

話はカップうどんに青虫が混入していたことをSNSでつぶやいたことから始まり、物語は二転三転し、今のネット社会の問題点、情報がすごいスピードで拡散されていくことの恐ろしさ、正義とは何か、ネットができることの役割など、いろんな要素が詰め込まれ、かつエンターテイメント性も高く、ドラマとしても先が読めない面白さがあった。単純な善悪の結論を出さないところも良かった。

物語の中で、主人公東雲樹が勤めるネットメディアの会社の編集長が言う言葉が印象的だった。

「みんな真実なんてどうでもいいんだよ。自分に都合のいい情報だけ信じるんだ。信じたいことしか信じないんだよ」

日頃ネットのコメントを見ているとそれは本当に強く思う。何が真実かはどうでもよく、自分の信じたいことを信じようとする。もし間違いが訂正されたとしても、それが自分にとって都合の悪いことなら拡散しない。間違った情報が多く拡散され、それが残り続ける。それは悪いことだと分かってやっているのだろうか。それとも踊らされているだけなのだろうか。ネットを使う側のリテラシーも問われている。

ネットだとどうしても刺激的な言葉が注目を集め、話題になったものが勝ちというようなところがある。それに対しては私もモヤモヤするところがあり、このドラマではうまく形にしてくれたと思う。

どうしても人は自分が注目されたい、承認されたい、自分の味方をしてほしい、物事が自分の都合のいいようであってほしいという気持ちはある。正義で人を裁きたくなることもある。しかし、ネットではその気持ちが増幅され、罪の意識が薄れ、取り返しのつかないことになる、という怖さ。間違った情報を流すのも、拡散するのも犯罪である。表現の自由だ、などと言う人がいるが、誹謗中傷も犯罪にあたることもある。

ドラマの方は、単純なハッピーエンドで終わらなかったが、ネットの悪いところだけでなく良い点も描いていた。「今の社会は今までのテレビや新聞などの古いメディアが作りあげたのかもしれない。しかし、私は真実を伝えたい。真実を知りたいと思っている人もたくさんいるはず」という東雲記者に熱くなった。

実際はネットで偏ったコメントをしている人なんてほんの一部かもしれない。本当は多くの人が真実を知りたいのかもしれない。 間違いと分かっている情報を書き込むことも、間違えた人を執拗に叩き続けることも、普通の感覚だったらできないはずで、ごく一部の人たちの悪意に踊らされているだけのかもしれない。過剰な言葉が取り上げられて、話題になるネット社会はなんとかならないかなぁと思う。 ネットは社会の一部であり、すべてではないこともきちんと認識していたい。

真実はどんなに信じたくなくても真実である。感情に任せて強い言葉で書き込んだりせず、冷静に相手に分かるような言葉で議論をする。どうしても人は感情に流されるので難しいことだけど、そうすればネットはすごく有意義で素晴らしいものになるだろうなと思う。