「獣になれない私たち」感想

 ドラマ「獣になれない私たち」が最終回を迎えた。

  このドラマの主人公深海晶(新垣結衣)は、仕事ができて周囲からの信頼も厚いが、常に周りに気を遣って、自分の気持ちを押し殺して生きている。京谷(田中圭)という恋人がいるが、彼は元カノと一緒に住んでいる優柔不断な男性。

  晶が行きつけの店で常連客の恒星(松田龍平)と知り合い、恋になるかも?という話で、最初はラブコメなのかなと思っていた。

  しかし、初回は晶が会社の社長にパワハラを受けるわ、土下座させられるわ、電車に飛び込みそうになるわでかなりしんどい話だった。

  全体を通しても、恋愛が主題というよりは「生きにくい人たちがどうやって自分らしく生きていくか」みたいな話で、ラブストーリーというよりは、人間ドラマといってもよかった。

 

  このドラマ視聴率が悪かったらしいけど、勧善懲悪とか分かりやすい物語が人気がある中で、ちょっと分かりにくさはあったし、何より初回のハードな展開で離脱した人が多かったんじゃないか。

 

  晶の「周りに気を遣いすぎる、断れない、期待に応えようとしてしまう」という性格に共感する人は多かったみたいで、私もそういうところはあるなと思った。もちろんあんなに仕事もできないし、コミュニケーション能力もないけれど。

  ただ、私の場合はあんな状況に追い込まれたら、うつになって会社に行けなくなって、退職せざるを得なくなるんじゃないかなと思う。その分晶は強いのか、行きつけのお店があってビールが息抜きになってるから大丈夫だったのか(私はあまり飲めないので)

 

  晶のような状況に陥ってしまう人、実際たくさんいるのだろう。「ドラマのような社長は実際にいる」という意見をけっこう見かけた。理不尽な状況でも耐えて、がんばって、心をすり減らしていく。状況を変えたいと思ってもその勇気もなく、声を上げることもできず、何がやりたいのか分からないまま、ただ毎日を過ごしている。そんな人はきっとたくさんいるのだろうと思う。

 

  ドラマの内容はリアルで、なんだか苦いビールを飲んでいるようだった。劇的な展開があって、都合よく物事が解決するようなことはなく、地味に、少しずつ、勇気を持って、自分の人生を変えていく物語。

  人間は少しずつしか変われないし、自分を変えようと思わなければ変われない。実際に変わるときはゆっくりしか変われないのだ。

  人のせいにしていても、自分の人生は自分でしか変えることはできない。それには勇気が必要なのだ。

 

 それにしても最終回はよくまとまったなぁと思った。最初の方は見ててしんどかったし、最終回でまとまるのかなぁと思っていた^^;最後まで見たら面白くて、見続けてよかったと思った。

 

  このドラマは恋愛ものではないと言ったけど、恋愛や形にこだわらない人間同士の関係を描いたところが良かったと思う。今の時代だからこその恋愛ものを見たいという気持ちもあるけど。

 

  最近のドラマは昔とは違って複雑になっていたり、繊細なテーマを扱っているものが増えている気がする。個人の生き方が多様になってきて、ドラマのテーマもそれに合わせて変わってきていると思う。

  その傾向はきっとこれからも強くなっていくんじゃないだろうか。もっと自分らしく、ラクに、個性を認め、互いを尊重するような、そんなドラマが出てくるんじゃないかと予想する。